通い徳利(貧乏徳利)・その1
あまりに数が多いこととあまりに実用的過ぎた文字だけのデザインは民芸のジャンルに入るにはちょっと面白みに欠けたのでしょうね。
それでも今の時代に見てみるとその文字さえ面白く感じるものがあるのではないでしょうか。
通い徳利にも時代によって造りが違ってくるとのことだがここでは3種類を2回に分けて紹介します。(3点はすべて多治見市高田地区にて生産されたものです。)
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通い徳利の特徴は『地名』と『店名や屋号』が書かれていること。
これは東京の『麻布十番』の地名が入っています。麻布十番の表記が一般的になった時期がいつ頃かははっきりしませんが江戸時代後期には一般的になったと思われます。
書かれた文字が大きいため20世紀に入ってからの製造品と推測されます。
店名は『阿波屋』でしょうか。麻布十番の歴史ではこの店の名は出てきませんでしたが、この地にあった宿屋や料理店だったのでしょう。
もう一方は屋号でしょうか。『ヤマ西』の屋号。これは屋号ですが他には電話番号や年号、干支、商品名など依頼主の依頼に合わせた文字が見られます。
これは残念ながら実際に流通したものではなさそうです。底にヒビ(窯割れ)が入っており光が透けて見えています。おそらく窯跡から採取されたものでしょうね。
参考資料:岐阜県多治見市高田町の産 高田徳利について 柴田厚志