瀬741のコーヒー碗皿・その2
明治時代から陶磁器業界の柱だった洋食器の生産は昭和17年で中断されます。それは戦況の変化から東南アジア向けの輸出が困難になったことと統制経済による締め付けが厳しくなったことがあげられます。
それでも『華美よりも清楚であれ』の考えからでしょう、日本人の好む文様を考案し何とか窯業の火をつなごうとしたようです。
牡丹を中心にした花文様が石版転写されたコーヒー碗皿。
桃色の牡丹、赤い牡丹、青い花(名前不明)が細かく描写されている。
反対側はひなげしの花がこちらも細かく彩り豊かに描かれる。
高台部は『高級硬質磁器 比良』銘と『登録 瀬741』の黒呉須印が見られる。石膏型による鋳込み成形で薄く製造されている。取っ手は別に製造後カップに付けている。また高台部でソーサーを傷つけないように伏せ焼きをしているため口縁部は無釉である。
ソーサーもカップと同じ文様が付けられている。左右にそれぞれ花模様が付けられている。
高台部も同じであるが、統制番号印が少し違う物と一緒になっていた。
高台部に『高級硬質磁器 比良』銘と『登録 瀬741』の黒呉須印が見られるのは同じで他に『セ741』のクロム釉印があるもの。
こちらは写真で確認できるかどうかというところであるが、左側の余白部に『瀬741』と陰刻印がある。
このような違いは製造時期のホンのちょっとした違いと思われる。黒呉須で付けられた統制番号印はあくまでも上絵付けの物で、素地としてみた場合誰が生産したものか分からなくなる。そういったことを避けるためにクロム釉印や陰刻印があるのだろう。