瀬816の茶碗
例外とするならば『鶴』は比較的多く採用されている。日本を代表するかのように考えられがちであるが、国鳥ではない(ちなみに国鳥はキジ)。その優雅さや『鶴は千年 亀は万年』と言われるようにおめでたさから取り上げられたのであろう。
3面にわたりそれぞれ違う構図の鶴が描かれている。鶴の文様は飛翔する場面を描くものと枝にとまっている、着地している状態を描くものとに分かれる。
実際に飛んでいる鶴を見たことがないのでこの図案のように飛ぶのか不明だが、おそらく古い時代からの図案なのであろう。
それぞれの鶴は濃淡の2種類の呉須(顔料)を使用してゴム印で絵付けされているようだがよく見ると墨はじきのような技法を使用している。墨はじきは古伊万里に見られる技法で、ロウで呉須をはじかせて絵(線)を表現するものです。ここで使用されている技法が墨はじきか否か断定は出来ませんが面白い作例だといえます。
高台内には『●寶園利●製 瀬816』と呉須印による製造元の屋号(銘)と統制番号がつけられています。屋号(銘)がもう少しはっきりしていればどの窯元で生産された物か判断が出来たと思われます。サイズは直径12.1センチ、高さ6.5センチ。