瀬716の丼
蓋と身(碗部分)に緑二重線が施されたものです。今でも見かける丼とほぼ同じ形をしています。以前、緑二重線入り食器に赤絵を施したものを紹介しましたがこれは赤絵の無い、小売店へ出荷されたものです。蓋が付いているのがうれしいです。蓋は長い年月の間に失われることが多いからです。
蓋の側面と外側。ひっくり返すと立派な皿になります。蓋には統制番号はつけられていません。
身(碗)の側面と内側の写真。縁が反り返り、その真ん中に緑二重線がつけられています。内側・外側共に他の文様はありません。
高台内に『瀬716』とクロム釉印の統制番号がつけられています。サイズは蓋が直径13.9センチ、高さ3.9センチ、身(碗部)が直径15センチ、高さ7.4センチ。
これらの緑二重線入り食器には『国民食器』などの名称が知られていますがこれらのものが実際に小売(流通)していたのかについてはっきりと示した資料が瀬戸市歴史民俗資料館の『<代用品>としてのやきもの』展図録に掲載されています(図版目録番号261)。
新潟県陶磁器卸小売価格等協定組合による『陶磁器公定価格告示寫』です。昭和15年11月から昭和16年3月までに決定された公定価格が掲載されています。
『品柄欄の白丸、白型入れ又は白とは白色無地のもの、青筋とは、青色又は緑色等の単色の単線、複線又は子持線を施したるもの、模様とは染付又は上絵付等に依り意匠を施したるものを謂う』(カナ文字はひらがなへ変換しました)とある。
特に緑二重線入り食器を区別して販売していたわけではないことがわかる。
この他に、昭和20年5月7日の岐阜県内で発行された新聞には『農商省が東濃の製陶業者に戦災者および地震(東海地方で東南海地震・三河地震)の罹災者用として新しい食器の製造を指示』し、『新生食器と名付け』て『工場食器国民食器として活用される予定である』との記事が出ている。
(岐阜県図書館のマイクロフィルム資料より抜粋)