絵本『ヤシノミ ドンブリコ』 その2
2月シンガポール占領、3月にはジャワ島のオランダ軍が降伏。4月、ドゥリットル隊(米軍)の初空爆が行われる。
5月、金属回収令によりお寺の鐘・仏具の強制供出が命じられる。これにより一部を除きお寺から鐘が消える。同月、上野恩賜動物園(上野動物園)でキリンの子供が生まれ、『ミナミ』と命名される。
対外的には緒戦の勝利が続く頃で、国内では暗い話題が多くなって食糧事情も厳しいことがうかがえます。そんな頃の作品のようです。さて、絵本の物語ですが。
南方のどこかの島。戦場になった様子が描かれます。この頃の作品は国策にのっとった部分を入れなければ出版が出来ないこともあったようです。この絵本にもそのような『影』の部分が見られます。
主人公のヤシノミが海に落ちる場面。実際にこんな風に落ちるものもあるのでしょうかね。
その後ヤシノミはさまざまな場面に遭遇します。荒波にもまれたり、クジラに食べられたり、サンゴ礁を漂ったり・・・。日本の軍艦が助けてくれないかとつぶやく場面もありました。
満天の星空の下、私自身この場面のせりふこそ作者が一番伝えたかったことなのではないかと思っています。
お星様とヤシノミのたあいも無い会話のように読めますが、日本の将来を予見しているかのようにも読み取れました。
ヤシノミは最後には日本に流れ着き、発芽して大きくなったと物語は締めくくっています。全ページカラー印刷のかなり豪華な本です。今村俊夫の挿絵はクレヨンで描かれたのでしょう、柔らかなタッチで和みます。
本当ならばもう少しクッキリと出すべきなのでしょうが、著作物でもありますので全ては出しておりません。