万25と万153の蓋物
今日紹介するものは雰囲気より地域の特産物を入れた容器ではないかと考えられます。
蓋から見たところです。大きく陽刻されたのは静岡県の名産品のわさびです。そう、これはどうやらわさび漬けが入れられた容器のようです。
二宮尊徳と同じようにとてもリアルな表現がされています。容器自体も木の桶を写しています。
側面の写真はそれぞれ2方向から。蓋から続く葉の部分は釉薬がかかっておらず白い素地を見せています。
別面は竹のたがが3本、これも立派な陽刻です。これほどの細工はあまり見かけません。
それぞれの内部ですが、前半の蓋物と比べ鋳込み成型は複雑です。特に蓋は内部に折り曲げています。特殊な型か、上下2つに分けて別々に成型したと思われます。
わさび漬けが入っていたであろう胴部は実は上げ底です。相当量がこの上げ底で損なわれてしまいます。今でも袋ばかり大きくて中身は半分も入っていないお菓子が多数あります、それと同じですね。
高台内には『万25』の黒呉須印がつけてあります。サイズは直径12.5センチ、高さ5.8センチ。
お金持ちの人が旅行か、仕事か、療養かで静岡(伊豆か)を訪れた際、購入して帰ったのでしょうか。今ならば捨てられてしまうようなものですが昔は何でも『いつか使える』と取っておいたものです。
まったく同じ用途の別デザインのものもあります。
こちらは側面にわさびが交差するデザインです。葉は蓋部分に続きます。
蓋にはわさびの葉がほぼ左右対称にデザインされています。これも陽刻です。
内部は先ほどと同じです。
これも容器の大きさの割には容量は少ないです。利益や原材料の仕入れ等、かかる費用を値段に上乗せできない(政府指定の公定価格のため)分少なくせざるを得なかったのかもしれません。
高台には『万153』と凹印がつけてあります。この2者が少なくとも同じような意匠を使用していることから企業的には何らかのつながりがあると考えられます。
サイズは測り忘れ。 『万25』よりは高さは高い。