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時のかけら~統制陶器~

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名30のスープ皿

 砥部焼では東南アジア向け商品の『伊予ボール』ガ主流だったようですが、東濃(美濃)にも東南アジア向けの主力製品がありました。

 それは『スープ皿』です。これについての詳しいことは『概説 近代陶業史』三井弘三・著に詳しく掲載されていますが長々となってしまうのでごく簡単に紹介します。(ああ、今回改めてページをめくってみましたら砥部焼の『伊予ボール』についても少し書かれておりました)

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 花を上絵付けした丸いスープ皿。真上からだとスープ皿っぽくないですね。一目見て『これは昭和のもに間違いない』という絵付けです。おしべ・めしべの部分だけゴム印で、花弁は手書きです。

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 さらには『けむり』と呼ばれる白素地内に黒いむらが出ています。こういうものが出てしまうといっぺんに不合格品となります。普通であれば破壊されてゴミ箱入りの品です。

 このスープ皿、主にオランダ領インドネシア方面に輸出されたようです。(明治以降、アメリカをはじめ各地に輸出された陶磁器ですが昭和始めはアメリカ、インド(英領インド)、インドネシア(オランダ領インドネシア)が大きな取引地になっています)
 東濃(美濃)の業者はこぞって生産をしたとのことですがあちらからの受注数がそのつどそのつど一定せず、国内産業に影響が出てくる危険が出てきたのだそうです。

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 側面からです。

 国内では窯業会の上部組織と産地が話し合いを持ち、スープ皿の一元的共同販売を実現しました。白素地業者と完成業者とがともに利益を得うる仕組みを作ったのです。(今は独占禁止法がありますので実行できませんがこのころはよかったのです)

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 底部分には『名30』と赤絵印が付けられています。名古屋のメーカーでいくつか製品が確認されているので当時は大きなメーカーだったのでしょう。そして、隣には富士山のマークがついています。

 この富士山のマーク、これこそ昭和10年8月より実施されたスープ皿共販事業を示すものなのです。特に『スープ皿銅版統制証票』と呼ばれるもので正式な製造品だけにこのマークが付けられました。

 『けむり』が入ったため不合格と判断されたものの捨てられず、在庫として保管されていたものを国内向けに上絵付けして販売したのでしょうか。ちなみにスープ皿共販事業会社は昭和18年に輸出の途絶により解散しています。

 
by richouken04 | 2008-06-18 09:53 | その他産地

戦時下(S15~S21)に焼かれたやきものを中心として


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