番号無しと岐514、そして岐355
矢羽根に桜の銅版転写のそば猪口です。番号のあるものと無いものです。こうして並べると刷りの状態が若干違う程度でしょうか。どちらがどちらなのでしょうか。
矢羽根の文様は江戸時代より『矢は飛んで行って戻ってこない』ことから嫁入り娘の持ち物として使用されたようです。矢羽根は矢絣とも呼ばれ歌舞伎の舞台で使用されこれが一般に広まったといえます。
大正時代などには花があしらわれていきます。これが陶磁器にも取り入れられたのでしょう。こういった衣装から意匠を取り入れることは古く桃山時代の織部焼からきているとも言えます。
両方を見比べると右は少しだけ器壁が薄いですね。たまたまかもしれませんがここいらへんに時代差があるかもしれません。
高台内をみるとどちらもほぼ同じ形状をしています。蛇の目高台とよばれる中央に丸い凹が造られています。古伊万里では中央部に釉薬が掛けられますがこれらにはありません。数多くの同手を見てきましたがやはり形状だけで釉薬は掛けられていなかったと思います。
統制番号は『岐514』の呉須印が付いています。
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ところで4月4日の犬山祭で開催された骨董市で同じ猪口を購入しました。当初、上記2つで紹介するつもりでしたが急きょ追加しました。
矢羽根に桜の文様です。あれだけ何百もの猪口をひっくり返したというのに・・・びっくりです。でも、番号のつけ方があまり上手でなかったため一番いいやつを選んできました。模様の出来が良くても番号がかすれていたり、消えていたりと難しいのですが。
高台内中心部に『岐355』の呉須印が付いています。
『岐514』と『岐355』の番号から調べてみると同じ組合、地区でした。ひょっとしたら番号の付いていない製品もこの地区で生産されたものかもしれませんね。