常107、常110、常219の火鉢
その後、大正、昭和の初めには施釉したものや漆を塗った「塗り火鉢」と呼ばれる物も生産されたようです。ここでは施釉されたもの、染付のもの、無釉のものを紹介します。
最初は全面に飴釉とよばれる釉薬を掛けたものです。鉄釉の一種でしょうが透明感があるのが特徴です。火鉢の形はほとんどが円柱形ですので六角形の形は珍しいかもしれません。
高台部に印で押した『常107』の統制番号が浮彫であります。サイズは測り忘れ。
次は染付の火鉢です。大きな老松をダイナミックに描いています、と言いたいのですが間近で見ると老松の幹の呉須のぼんやりした部分以外はゴム印による絵付けであることがわかります。ゴム印を作る技術、絵の構図などいい仕事をしていると思います。
内側にはベージュと白の釉薬?化粧土?が交互に掛けてあります。この頃の火鉢の内側は大半が上部に施釉か全面に釉薬を散らしています。これは後者に入る物でしょう。また戦後(昭和30年代後半まで)のものですと内側の多くが施釉されているようです。
底の土は白っぽい土を使用しています。常滑焼のイメージですと赤い土を思い出しますが本来は白い土です。この火鉢では磁器の白さを出すためか成形後、まずベージュの化粧土、更に白い化粧土をつけて絵付けをしているようです。
高台内に『常110』の浮彫印の統制番号があります。外を石膏型で覆い、機械轆轤で成型した物です。焼きが甘いのか貫入(ヒビ)が見られます。サイズは最大直径21センチ、高さ21.5センチ。
最後は明治以降生産された無釉の常滑らしい火鉢です。山水画を彫り込んだように見せています。やはりこれも成形時、または成形後の完全に乾く前に型押しで模様をつけています。もっと古い時代(明治期)は一つ一つを削りだして模様をつけていました。
これは別面。やはり細かな文様が目を引きます。また光沢の出た肌合いは金属器のような雰囲気があります。
もう一面には漢詩が書かれています。部分的に判読は出来るのですが、恥ずかしながらどう読むのかわかりません。ただ、このように付けられた漢詩には静かな暮らし、安寧な暮らしを願う詩が付けられていると聞いたことがあります。
中に灰が入っているため写真は撮っていませんが、高台内に『常219』の凹印の統制番号があります。サイズは最大直径26センチ、高さ23センチ。