小さな人形たち
ひな祭り(桃の節句)は昭和17年の日記帳にもちゃんと掲載されています。グリコ日記という名前で出版されています。キャラメルのグリコと関係あるのかは不明です。これは使用済みのもので男の子が書いています。
さて、本題です。
土人形と呼ぶものかどうかの判断が出来ないのですが、高さ5センチくらいの大きさの人形で源義経に同行し、奥州平泉で殉じた弁慶をかたどったものです。
北陸道の関所、安宅関(あたかのせき)で勧進帳(実は白紙)を読み上げる弁慶は歌舞伎でも取り上げられた題材です。ここではかわいらしい表情をしていてこの旅路の果ての悲劇など微塵も感じさせません。ただ、鼻部部がこすれてしまっているのが残念です。
この人形の台座の裏には戦時中(昭和14年9月以降)の証書が貼り付けられています。
規格 21
査定之證 マル公 査定 19
日本玩具人形類統制協会
登録番号 232
とあります。専門ではありませんので規格や査定の中身、生産地などは不明です。
次のものは当時の写真を載せた本などにも見受けられる看護婦の姿を写したものです。このころ従軍看護婦と呼ばれる方々がおられました。日本赤十字社社員と旧陸海軍が採用した看護婦です。
ここに表されているのは日本赤十字社の看護婦の姿です。隣にあるものは砲弾と思われます。生と死を表すものが同居する戦場での彼女たちの働きはもっと賞賛されてもよいものではないかと思われます。
この人形の台座にも証書が張られています。
規格 彩色物 一級中
査定之證 マル公 査定 100%
日本玩具人形類統制協会
登録番号 ウ 38
と読めます。登録番号の『ウ』の後ろが虫食いになっているので数字やカタカナがあった可能性はあります。
これもまた小さな人形で台座を含めても5センチ無かったと思います。稚児が鯛(?)の乗った車を引いているものです。十分な材料の確保や保管ができなかったであろう時代において、これだけ彩色がはっきりと残っているのはうれしい限りです。
表情もかわいらしく、国内世論がまだ緒戦の勝ちに酔いしれている頃に製造されたのだろうと推測が出来ます。
裏の証書もとても状態がよいです。
規格 彩色物 二級中
査定之證 マル公 査定 100%
日本玩具人形類統制協会
登録番号 カ 497(?)
と判断できます。統制陶器では『岐』や『瀬』など産地を示す記号と番号があります。玩具にも同じように『ウ』や『カ』といった記号がありますが、どこの地名を表すものか、もともと産地を示すものなのかどうか私にはわかりません。
最後の物は証書のスタイルがもう少し前(おそらく昭和15年)と思われるものです。
小坊主(?)をかたどった人形でこれも小さなものです。彩色もきれいに残っています。この手の人形は民芸のたぐいとして人気があり、小さな人形をガラスケースに並べて売る業者さんも多数あります。
これはなにやらごちゃごちゃと混ぜたような箱にあり価格も格安でした。いつ壊れてもおかしくない状況での出会いは運命なのでしょうか。
台座には
マル公 人形検査格付証票
上 ¥ 6
京都陶磁器工業組合
とあります。マル公の印があるので昭和14年9月以降のものとわかります。