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時のかけら~統制陶器~

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岐907、岐914、岐963のなます皿 その1

 ある技法・ある器種はある年代に属したものでその後は使用・生産されていないと考えてしまうと正確な時代判定に支障が出ることがある。
 先日の銅版皿も番号付きのものが発見されたからこそ、昭和16~18年までに生産されていたことがわかった。発見する以前は『銅版は金属回収の際供出されただろう』と考えていた。この思い込みがどんなに目を曇らせるのか、今日のものも考えさせられるものです。

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 ゴム印山水文のなます皿です。大きな松に賢人がたたずむ掛け軸でたくさん描かれた文様を簡略化して描いています。ゴム印を押した後で上から黒い呉須で線をなずり濃淡をつけています。
 なます皿縁は『寿』とノコギリ状枠に花をあしらっています。

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 側面から見るとなます皿であることがはっきりしてきます。唐草文がこれ以上はないだろうというところまで簡略化されています。

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 高台内は蛇の目高台と呼ばれるものです。江戸時代、18世紀半ば以降の製品に見られ、明治時代にも見られます。高台内中央部には『岐907』と呉須印が打たれています。
 サイズは直径15.1センチ、高さ4.3センチ。

 この技法は畳付(器とテーブルの接地面部分)に釉薬をかけることで傷が付きにくくする効果があるのと、焼成時に窯道具で高台部の広い面を支えることが出来るメリットがあります。

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 こちらは富士山を遠方に眺める図で、二行の詩『秀為不二嶽 嶽々秀千秋』とつけられています。『画賛』と呼ばれるものでしょう。絵から連想される詩や絵の賛辞を書くことが古くから行われています。これは富士山を賛辞するものです。
 縁は『岐907』のなます皿と同じ文様です。ここで初めて気がつきました。

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 高台内は蛇の目高台で、釉薬が付着、窯道具の一部が剥がれてついたままです。中央部に『岐914』と呉須印が押されています。サイズは直径14.8センチ、高さ4.3センチ。

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 最後は水車を持つ大きな藁葺き屋根の山水文です。このような図も小皿に多く描かれています。これにも『好山高●暁場 果山●●月外 ●●●(花押?●は読めず)』と漢詩が付けられています。はっきりと読めませんが、静かな風景を読んだ詩には違いありません。
 周囲は簡略化した唐草文が付けられています。

 
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 高台は蛇の目高台ですが、これは中央部に釉薬が掛けられていません。わざわざつけることも無いと、省略したのかもしれません。
 傷のようなものが3ヶ所見えますが、石膏型でのロクロ成形時に空気が残っていたためしわが出来たのです。
 中央部に『岐963』と呉須印がつけられています。サイズは直径14.7センチ、高さ3.1センチ。

 
by richouken04 | 2006-06-01 18:26 | 岐(岐阜県東濃地区)

戦時下(S15~S21)に焼かれたやきものを中心として


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