料理の本・その2
この頃政府が商品価格を決定する『公定価格制度』がスタートしています。いよいよ戦時体制がひしひしと生活に浸透する頃でしょうか。
とても色鮮やかな鍋が描かれた表紙です。今の時代においてもこれだけの料理をしようとすれば結構な値段になると思うのですが・・・。
具材だけでなく、この当時の食器類を見るのもちょっとした参考になります。
この冊子にも料理につくり方が載せられていますが、郷土料理が多く掲載されております。
『あんこう鍋』、『関西おでん』、『信州のキジ鍋』、『加賀のじぶ煮』、『瀬戸内のカワハギの白味噌汁』、『宮崎の小豆汁』、『支那風の白菜鍋』などなど。
かわりどころ?では『ピーナッツ入りけんちん汁』。
『落花生が無かったら白胡麻でもお使いください。申し分ない栄養汁です。
まづ人参、ごぼう、里芋、大根などの野菜を深鍋に入れ、たっぷりの水から火にかけて、軟らかくなったら、別にフライ鍋に胡麻油を引き、豚肉少々と水切りした豆腐をざっと炒め、野菜と一緒に煮込みます。
落花生は薄皮を取り、擂鉢に入れて叩き潰し、油が出るほど擦りましたら、野菜の煮汁で伸ばし、そのまま鍋にあけて、塩と醤油で味付けし、とっくりと味が沁みたところをお勧めします。(中村幸子)』
どんな味になるのだろうか。案外と普通な味だろうか?
この時代を感じるものでは『国策鍋』です。仰々しい名前ですが、内容としてはそれほどでもありません。
『これは北支那の家庭で、お客様をお迎えした後の残り物を集めてする鍋ですが、こちらではお正月の煮〆とか、残ったお惣菜など、特別甘いとか酸いとかいう味以外のものは、何でも集めてお試しください。
いろいろなものから出る味が融け合って案外結構に頂かれ、それだけではどうにもならない少しづつの残り物も、かうすると立派なお鍋に更正します。
材料は人参、大根、ごぼうの煮物、焼き魚や煮魚の残りなど、何でも使えますから、形の悪いものは、細かく切るかほぐすかして、見た目を変えておきませう。なほ煮出し汁が少ないと思ったら、油揚か細切肉のやうなものをちょっと加へ、白菜、はうれん草など、これも有合せの野菜を程よく取り合わせてください。
鍋に材料を彩りよく並べ、スープに酒を盃1杯合わせた汁(湯でもよい。)を注いで、ぐつぐつ煮てゐるうちに、いろいろのものからお味が出ますから、それによってよいお加減に調えてください。(山田品子)』
打ち出すのも困難なくらい長い・・・。要は野菜などのごった煮。戦争末期にはもうこのような鍋物が主流だったと思うのですが、この頃はまだ立派な料理の一つとして紹介されているんですね。
裏表紙は『レートコールドクレーム』の広告。穏やかなお顔の女性がとても戦争をしている国とは思わせないものです。製品容器はまだガラスのように感じます。