岐870の薬容器
何点か紹介した化粧品瓶・薬容器は釉薬がかけられているものでしたが、これは硬く素焼きしただけの無釉です。
釉薬となる土を掛けてそれをガラス状に溶かすのには約1200度必要です。一度に窯で焼く数も大きな窯ですと3000個と莫大な数を焼く事になります。それだけ労力も燃料もたくさん必要となります。
当時は燃料になる石炭が統制されている状況で、窯業を続けるのはとても困難なことだったでしょう。結果として必ずしも必要ではない釉薬が省かれたのではないかと考えています。
胴部の下部には商品名が陽刻(凸)で『シツプ ネオ パピロン』と付けられています。薬の名前は今も昔も変わった名前が多くあって面白いものですが、戦時下でよくぞこんな名前をつけたものだと感心します。
蓋には『ネオ パピロン』の文字があります。これは陶片狂さんが蓋だけを拾われています。『陶片茶房』に投稿されているはずですのでお探しください(無責任ですいません)。
蓋だけではどんなものの容器かは想像するしかありません。ましてやこの名前ですから悩まれたことと思います。
一般的には底(高台とも呼ぶ)部分に統制番号が付けられるのですが、蓋が付属するものには蓋の裏側に統制番号が付けられるパターンがあります。これはその一例です。他には急須や土瓶で同じような例がありました。
蓋付きのものはネジがきってあるものですが、これはきられておらずのせるだけの蓋です。
蓋裏の統制番号の拡大です。『岐870』の黒呉須印が付けられています。胴部の底は何も付いていません。
サイズは直径9センチ、高さ(蓋込み)7.2センチ。